就労移行支援事業所は何をするところ?職業準備性を高める訓練とは
働くことは、単に仕事をすることではありません。
日々体調管理に努め、規則正しく起床し、身だしなみを整えて通勤すること。
職場であいさつをし、適切な情報伝達を行い、コミュニケーションをとること。
意欲をもち、臨機応変に、効率よく仕事に取り組むこと。
すべてが、働くということに含まれています。
これらのスキルは「職業準備性」という言葉で示されることもあります。
就労移行支援は、障がいを抱えている方に、安定して長く働き続けるための、職業準備性を高める訓練を提供するサービスです。
自分の障がいへの理解を深める手助けをし、障がい特性に応じたアドバイスを行うことで、障がいを抱えた状態でも安定して働き続けられるよう支援します。
また、障がいへのサポートだけではなく、就労に必要なビジネスマナーやビジネススキルの習得もサポートします。事業所によっては、専門的な職業訓練も提供しています。
就職したあとも、職場に定着するために、定期面談や企業との連携を行っています。
就労移行支援で訓練を受けることで、働くことにハードルを感じている方でも、安心して働くことができるようになります。
弊事業所は、発達障がいや精神障がいをお持ちの方向けの、就労支援事業所です。
この記事では、弊事業所での支援をベースに、就労移行支援の具体的なサービス内容を紹介します。
目次 [開く]
就労移行支援事業所=就労に必要なスキルを身に付けるところ
就労に必要なスキルとは|職業準備性ピラミッド
安定して就労する土台としての職業準備性は、上図のような「職業準備性ピラミッド」で示されます。
就労移行支援は、この土台を固めるための訓練を提供します。
仕事の技術を身に付けるだけではなく、障がい特性への対処やコミュニケーションなどについても学ぶことで、就職後周りの人と良好な関係を築き、早期離職を防ぐことができます。
キャリアデザインをして就職活動に備える
働き方は、障がいの程度やライフイベントによって変化します。昇進欲求も人それぞれです。こういったことを考慮して、将来のキャリアを描くことを「キャリアデザイン」と呼びます。
就労移行支援では、キャリアカウンセリングを行い、人生においてどんな職種や働き方が適しているかについての助言をします。これを基にキャリアデザインをすることで、就職活動の軸が定まります。
社会人経験がなく、働き方のビジョンがない場合でも、価値観や理想のライフスタイルを加味してアドバイスしますので、安心してください。
安定して就労し、職場に定着するためのサポートも
就職が決まったら終わりではなく、職場定着支援も行っています。これは就職後も一定の期間、定期的な面談や企業との連携を通じて、職場に定着するためのサポートです。
いままで就職してもすぐ辞めてしまっていたという方も、悩みやトラブルについて相談できる体制があることで、安定して就労することができます。
スキル習得|職業準備性を高める訓練
心と身体の健康管理|自分の障がい特性を理解する
働く上で、障がいをオープンにするか否かに関わらず、自分の障がいについて理解を深めておくことは重要です。
障がいには、それに伴う様々な特性があります。人それぞれで一概には言えませんが、例えばADHDは注意力散漫、ASDは感覚過敏といった特性を伴うことがあります。
こういった障がい特性によって、働くことに困難が生じることがあります。
しかし、事前に理解を深めておけば、対策することができます。
例えば聴覚過敏の場合は、防音対策をしておく、注意力散漫の場合は、タスク管理の方法を事前に決めておくといった風に、工夫することでトラブルを未然に防げるでしょう。
就労移行支援では、障がい特性の理解をサポートし、対策についても助言します。
また、障がい者雇用枠での就職を考えている場合は、面接の際に障がいについての質問もされます。
就労移行支援を利用して、支援員の客観的な目線を加えて考えておくことが、面接対策にもなります。
日常生活管理|社会性を身に付け、規則正しく健全な生活を送る
就労するにあたって、生活リズムを整えることは基本です。
しかし、病気などを理由に退職した場合、その後の療養中に生活リズムが崩れて、一般的な就労のリズムに乗れなくなってしまうこともありますよね。
就労移行支援を利用し、定期的に通うことで、働くときと同じリズムを身に付けることができます。
ビジネスの場にふさわしい身だしなみや、金銭管理などについてもアドバイスを受けられるので、生活を安定させて就労に備えることができます。
社会生活能力・対人技能|自分に合うコミュニケーション方法を学ぶ
発達障がいや精神障がいをお持ちの方は、病状や障がい特性の影響もあり、コミュニケーションに困難を感じることがあります。そこで、就労する上で必要な対人技能を習得するための訓練を行います。
多種多様な対人技能の中から、不足している部分を中心に、メソッドの学習や実践練習を通して、コミュニケーション能力を伸ばしていきます。
具体的には次のようなプログラムがあります。
非言語コミュニケーション
人は会話をするとき、言葉の意味以外にも、表情やしぐさ、声のトーンなどから、相手の意図を読み取ります。こうした言語によらないコミュニケーションのことを、非言語コミュニケーションと呼びます。
表情や声色を操るのが難しいという障がい特性をお持ちの場合、非言語コミュニケーションの種類と具体例を知ることから始めます。知識をつけることで、言葉以外の意図を読み取るスキルが身に付きます。その後、実践練習を行い、表情豊かに発信できるようになります。
アサーショントレーニング
発達障がいの特性のひとつとして、他者の気持ちを理解するのが難しいというものがあります。そのため、コミュニケーションの中で、自己主張ばかりしてしまったり、逆に全く発言せず押し黙ったりしてしまうことがあります。
アサーションとは、自分も相手も尊重しながら自己主張する方法のことです。アサーショントレーニングでは、発信と受信の一方に偏ることなく、相手の意見や気持ちを尊重しながら自分の意見を伝える訓練をします。
自分の自己主張タイプを知り、人の立場になりきって考えることの反復練習で、場面に応じた適切な表現を身に付けることができます。
ストレスコーピング
スムーズなコミュニケーションをとるためには、感情をコントロールする必要があります。
うつ病などの精神障がいに伴い、ストレスに過敏になると、人前で涙が止まらなくなるなど、コミュニケーションに困難を生じる場合があります。
ストレスコーピングとは、自分にとってのストレスの原因を知り、適切に対処することを指します。
何がストレスになるかは人それぞれです。自分がどんなときにストレスを感じるのかを知ることで、突発的なストレスにも備えることができます。また、ストレス要因への認知を変える、適切な言動をとるなどの方法を身に付け、いざというときに感情が暴走しないように対策します。
基本的労働習慣|ビジネスの場に必要なマナーやスキルを習得する
ビジネスの場には、特有の常識が存在します。社会人がよく使う敬語や言い換え、お辞儀の角度や報連相の方法など、基本的なビジネスマナーを学ぶことで、社会人生活に備えます。
また、働くにあたっては心構えも大切です。働くことの意義を考え、意欲的に仕事に取り組むための自己啓発も行います。
職業適性|思い描くキャリアに合わせて職業訓練を行う
希望する職種があれば、それに沿った職業訓練を行います。この訓練内容は事業所によって異なるので、やりたいことが決まっている場合は、それができる事業所を探しましょう。
ちなみに弊事業所では、IT特化型の就労移行支援を行っています。Webデザイナーやプログラマー、動画編集などのクリエイティブ職を目指す方向けに、専門講師が実践的な訓練をします。
実践的な課題に取り組むことで、かかる時間や疲労感についても自己理解することができ、安定して仕事を続ける一助となります。
就職活動|キャリアカウンセリングや企業実習も受けられる
キャリアカウンセリング|将来のビジョンを明確にする
支援員がカウンセリングを行い、これまでの人生や働き方、将来の希望や理想などを分解し、そこから将来のビジョンを見定めるサポートをします。
自分の軸が定まっていない状態では、就職活動をしても企業とのマッチングがうまくいかず、面接に通らない、就職してもうまくいかないなどの不具合が生じることも。
ひとりでキャリアデザインをするのは、難しいものです。支援員の客観的な視点を取り入れることで、考えがまとまりやすくなります。
求人検索のサポートも、ハローワークと連携して行います。勝手な職業あっせんを行うわけではなく、自分の希望に沿った仕事探しをサポートします。
企業見学・実習|障がいを抱えた状態で働くイメージをつかむ
障がい者雇用枠を検討する場合、希望に沿って企業見学や実習を行います。
特に初めて障がい者雇用枠を目指す方は、どのような働き方をするか、イメージが湧きづらいでしょう。現場の声を聞いたり、実際に仕事を体験したりすることで、自分の障がいが仕事にどう影響するのか、どのような配慮を受けられるのかといったイメージをつかむことができます。
実習はインターンシップのようなもので、5日間ほど実施されることが多いです。
就職活動|履歴書添削や模擬面接を受けて準備する
就職するにあたって、基本的には書類選考や面接があります。
就労移行支援では、履歴書の添削や模擬面接も行うので、しっかりと本番に備えることができます。障がいをクローズにする場合でも、企業に合わせた添削や対策を行います。
障がい者雇用枠に応募するのであれば、支援員が面接に同行できることもあります。自分から障がいのことをうまく話すことができないときは、支援員が代わりに説明します。
また、初めて就職する場合などは、トライアル雇用制度のご案内もしています。
これは3か月間の試行雇用を行う制度で、働く場の雰囲気や、業務内容を体験することができます。
また、企業と求職者のミスマッチを少なくすることができます。
職場定着支援|安定して働き続けるためのサポート
就労移行支援を利用して就職した方には、6か月の職場定着支援を行います。
通っていた事業所が就労定着支援事業も行っている場合は、7か月目以降も利用することができ、その場合は合計で最大3年6か月の支援を受けることが可能です。
そうでない場合は、別の就労定着支援事業所に支援を引き継ぐという方法もあります。
定期面談|仕事の困りごとや生活の悩みを相談できる
就職後3か月までの期間は、それ以降と比較して離職率が高いです。離職の理由としては、障がいへの理解や配慮が不足していたことや、職場での人間関係がうまくいかなかったことなどが挙げられています。
こういった早期離職を防ぐために、定期的な面談を実施します。
面談では仕事について、業務での困りごとや人間関係の悩みなどの相談を受け、共に考え、必要に応じて助言します。
仕事の悩みごとは、誰に相談していいかわからず、ひとりで抱え込みがち。就労移行支援で接してきた支援員に相談することで、思い詰めることなく、安心して就労できるでしょう。
企業との連携|職場と連携して働きやすい環境へ
就職してすぐの時期は、企業側も配慮すべき内容を把握しきれておらず、コミュニケーションにおいてすれ違いが発生しやすい時期です。
障がい者雇用枠で就職した場合は、就労移行支援の支援員が、企業と連携し、利用者の就労生活をサポートします。
例えば、利用者が職場の人に直接お願いしづらい配慮事項を、代わりに伝えたり、業務指示における配慮が不十分なときは、職場に適切な業務指示の方法について助言したりします。
就労移行支援を利用し、安定して働く未来へ
障がいを抱えた状態だと、企業に雇用されることを考えたとき、不安な気持ちになりますよね。
しかし、事前に対策できる部分は対策し、加えてどんな配慮があれば働けるかを考えておくことで、きっと自分に合う職場と出会い、安定して働くことが可能です。
就労移行支援を利用して職業準備性を高めることは、安定した社会人生活をおくる土台となります。また、就職後も職場定着のための支援を受けることで、長く働くための基礎を築くことができます。
備えあれば憂いなしという言葉があるように、あらかじめ準備をしておけば、何が起こっても心配することはありません。
職業準備性の高い人材は、どんな職場でも重宝されることでしょう。
一朝一夕では身に付かないものではありますが、適切なサポートを受けることで、苦手を克服し、得意を伸ばすことができます。
障がいの影響でどうしても克服できない部分があれば、どんな配慮を求めればいいか、それをどうすればスムーズに伝えられるかを考えておけば、いざというときに焦らずに済みます。
就労移行支援に興味を持たれた方は、お気軽にご連絡ください。
私たちは福祉事業所と連携を図っているので、IT以外の仕事に興味がある方にも、きっと希望に合う事業所を紹介できるかと思います。
弊事業所では、数多くの利用者の方がスキルを自分のものとして、就職後も自信を持って社会人生活を送っています。
もしあなたが障がいを理由に、働くことをためらっているのなら、私たちといっしょに、社会へと一歩踏み出してみませんか?