
障がいのある方の力が、企業の未来を変えていきます。 ―雇用率65%を実現する取り…
ATUホールディングス株式会社
障がいのある方の就職をサポートする就労移行支援・就労継続支援A型事業所「Tech.neo」
平日10:00~18:00 /土曜10:00~16:00
ATUホールディングス株式会社
岩﨑 龍太郎
目次
ATUホールディングス株式会社は、主に警備業を中心とした事業を展開しており、駐車場警備・交通誘導警備・施設警備の3つを主力としています。具体的には、大規模なビル・マンションの建築工事や土木工事現場での交通誘導、商業施設・公共施設・イベント会場での駐車場警備、さらに施設常駐警備など、幅広い現場に対応しています。
私が過去、働いていた警備会社では、副社長として7名だった従業員を、最終的に180名まで増やし、障がい者雇用にも積極的に取り組みました。結果として、鹿児島県内最大規模の警備会社へと成長できたんです。しかし、効率重視の体制により、次第に社員から笑顔が消え、働きやすいとはいえない職場環境になってしまいました。この経験から、障がいの有無に関係なく、誰もが安心して働ける職場づくりの重要性を強く実感しました。
障がい者雇用を始めたきっかけは、精神障がいのある方が相談に来られたことでした。当時は法律上、2000年まで障がい者は警備員として働くことが認められていませんでしたが、申請の道筋を整えたことで、全国で初めて精神障がい者を警備員として正式に雇用した事例となりました。
しかし、障がい者も警備の仕事が十分できることは知っていたのですが、その警備会社では障がいの有無での区別や、障がい者への理解が欠けていました。そこで、自分で起業し障がい者や仕事に困っている人を優先的に採用することにしました。現在では、障がい者や生活弱者・高齢者など多様な人財が弊社の貴重な戦力となっています。
障がいのある方の成長事例として、もともと一般の社員として入社した方が、5~6年かけてリーダーに成長し、現在では東京支社長を務めているという事例があります。この方は福岡から東京に転勤しており、精神障がい(双極性障がい)を抱えながらも東京支店の運営や10名程のスタッフのマネジメントを行いながら活躍しています。
また、それ以外の現場で活躍している障がいのある方の事例では、現場で直接作業できない場面においても、地域住民へのチラシ配布や挨拶といった、彼らならではの役割を担っていただいています。その丁寧な対応により近隣との関係が良好になり、クレーム件数が約3分の1に減少するなど、大きな貢献をしています。
こうした一人ひとりの活躍が地域での信頼につながり、結果として弊社の評判の向上や、新たな仕事の獲得にも結びついています。
全員へ丁寧な教育を行い、一緒に働く仲間にも障がい者雇用の必要性などを伝えることで、会社の戦力となっています。障がい者雇用を通じて得られた一番の成果は、お互いを助け思い合う気持ちが強くなることで社員の結束力が増していることです。また、障がい者雇用をきっかけに地域社会からの認知も高まり、結果として業績向上にもつながっています。さらに、社員一人ひとりの思いや価値観を反映した「社員手帳」を制作するなど、障がい者雇用の取り組みを通じて、企業文化の浸透にもつながっています。
障がい者雇用においては、「仕事が先」ではなく「採用が先」という考え方で取り組んでいます。まず採用し、本人の特性を見極めたうえでできることから仕事を探し、職場内でのサポートや工夫・改善を通じて仕事の幅を広げ、戦力化を図っています。これは「会社には障がい者の仕事がたくさんある」という考えに基づいています。
また、精神障がい者向けに開発された面談支援ツール「SPiS(エスピス)」を活用しています。これは日報をもとにしたツールで、精神障がいを持つ方が「困った」と声に出せないときにも、変化や兆しに気づけるよう設計されています。「面談を行うためのツール」として、コミュニケーションのきっかけづくりに役立っています。敢えて、入力に一定の手間がかかる設計にすることで、やり取りの中に気づきや対話が生まれるよう工夫されています。
面談は、ジョブコーチ・保健師・産業医・外部の専門職など5名体制で連携し、週に1回以上の頻度で実施しています。日常的な支援やリスクアセスメントを通じて、特にリスクが高いと判断された方(リスクレベル3以上)には、個別の面談や必要な対応を行っています。
支援チームは、障がいのある方も含めて1チームあたり5〜6名で構成されており、関係部署も交えてディスカッションを行い、対応方針をチーム内で共有しています。全体でフォローする体制が整えられており、これは障がい者に限らず、すべての従業員を対象とした取り組みで、互いに支え合える職場づくりが実現されています。
警備業は一見すると体力勝負の現場仕事に見えますが、実はルールや手順が明確で、発達障がいや精神障がいの特性を持つ方々が強みを発揮しやすい業種です。
今では、単なる福祉的雇用ではなく、彼らの特性や強みを活かし、組織の力を底上げする「戦略的な雇用」として、社内に根付いています。
障がい者雇用は、企業の意識改革を促進し、企業価値を高めることにもなります。障がい者雇用には課題もあり、就労現場では色々なトラブルなどが発生することもあるのかと思います。組織は、トラブル対応により知恵を出し対応することで強くなります。障がい者雇用は、組織の意識改革として一番有効な手段とも言えます。是非、多くの企業・職場で障がい者を暖かくお迎えしていただければと思っています。
今回訪問した企業様の会社概要
インタビュー:2025年5月24日
※掲載内容はインタビュー当時のものです。
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