事務
全ての人が活躍できる社会を目指して・・・
SDGsと共に発展する障がい者雇用の新たなモデル
目次
- Q1 障がい者雇用の背景や取り組みについて (佐藤様)
- Q2 障がいのある方の仕事や役割について教えてください。
- Q3 障がいのある方がどんな活躍をされていますか?また会社にどのような貢献をされてますか?
- Q4 障がいのある方が現場で直面する課題や困難について、企業としてはどのようにサポートしていますか? (佐藤様)
- Q5 障がいのある方が安定就労をするために心がけていることはなんですか? (佐藤様/小山田様)
- Q6 卒業生が持っている強みやスキルが企業に貢献した、具体的な事例を教えてください。 (小山田様)
- Q7 卒業生が入社した後の、Tech.neoとの連携についていかがでしょうか? (小山田様)
- Q8 就労支援事業所との連携についてどのような取り組みをされているのか教えてください。 (佐藤様)
- Q9 障がいのある方の雇用を700人まで増やした経緯と、障がい者雇用を促進するにあたり、それぞれのフェーズで苦労したことは何ですか?
- Q10障がい者雇用を考えている企業様へのメッセージ
Q1 障がい者雇用の背景や取り組みについて
(佐藤様)
私は、障がい者雇用をするというよりは、SDGs・CSR・ESG※といった企業が果たすべき責任があり、その一環として多様な働き方を推進することが企業の役割だと考えているんですよね。そのようなこともあり、現状、障がい者雇用にとどまらず、外国人労働者の方の受け入れも積極的に進めています。
当初、障がい者雇用を始めたきっかけは、法定雇用率や納付金の問題でした。5年前、障がいのある方を雇用していなかったことで納付金の支払いや企業名の公表といった課題を抱えていたんですよね。
それで私はTRIALに招かれました。障がい者雇用を促進するために、最初は1人でTRIALベネフィット特例子会社を立ち上げるためのスキームを作り、企業名公表の半年後には、法定雇用率を達成する目標を掲げ、2024年9月には法定雇用率2.79%※の達成まで導きました。今では、トライアルグループ全体で障がい者雇用者数は直接雇用700人を超え、そのうち本社勤務は40名となっています。
また、本社に構える総菜部門の部署では、施設外就労で就労継続支援A型の方々が活躍しています。全国では、施設外就労で関わっている事業所は60事業所で約200人程はいらっしゃると思います。もともとは就労継続支援B型の工賃底上げから始まって、今ではA型生産活動への活性化にも貢献をしています。私が施設外就労を積極的に取り入れているのは他の目的もあって、施設外就労で雇用を満たそうという気持ちではなくて、施設外就労を通じて、最終的には直接雇用に移行させたいと考えています。直接雇用に転換する際には、既に戦力として定着して働けるようになっているんですね。就労支援の方々も就労に繋がるという意味で、お互いwin-winの関係になれるんです。
※法定雇用率について
※SDGs・CSR・ESG
SDGs: 2030年までに達成を目指す、貧困や環境問題解決を含む17の持続可能な開発目標。
CSR: 企業が利益追求だけでなく、社会的責任を果たし、地域社会や環境への貢献を行う取り組み。
ESG: 投資判断において、環境保護、社会的責任、企業統治の3要素に基づいて企業の持続可能性やリスクを評価する基準。
Q2 障がいのある方の仕事や役割について教えてください。
本社勤務の方々は、それぞれの部署で業務が異なり、経理・事務、システム開発やDX推進といったプログラム業務などがあります。
バックヤードの業務には、肉・野菜・魚のパック詰めやお弁当作りといった作業があります。
Q3 障がいのある方がどんな活躍をされていますか?また会社にどのような貢献をされてますか?
障がい者の種別で言えば、発達障がいの方が35名、精神障がいの方が3名、知的障がいの方が2名という内訳です。現在は発達障がいの方の割合が多いですが、本社の業務では彼らの尖った才能が会社の業務に大いに貢献しています。また、健常者よりも彼らに任せる業務の方が生産性やパフォーマンスが高くなるため、部署の係長などからは『本当に助かる』『業務から抜けられると困る』『必要な存在』といった声が上がり、障がいのある方をさらに雇用したいという声が広がっている現状です。
Q4 障がいのある方が現場で直面する課題や困難について、企業としてはどのようにサポートしていますか?
(佐藤様)
障がい者雇用で直面する課題は、どこの企業も抱える問題だと思います。それは障がいのある方を「戦力化」することができていないんですよ。
一番の例は、ハローワークからの紹介で、障がい者雇用をはじめた頃に九州大学の卒業生を採用しました。最初は4時間の郵便業務からはじめたのですが、「なぜ郵便業務をしなくてはならないのですか?」と言いながらも業務をそつなくこなし、いつのまにかリーダー格となり、チームをまとめるようになっていました。
その後、正社員に転換し、現在は得意なPythonを活かしてトライアルホールディングスの数値分析を行い、システム開発チームのリーダーを務めています。そういった方が力を発揮してくると、周囲の役職者から『ああいう人材が欲しい』という声が上がり、現在では40名の規模にまで成長しました。
活躍できる人材の資質を伸ばすためには、単純作業をただ単にさせちゃダメなんですよ。自身の仕事の一部がどんな役割で最終的にどのような貢献をするのかを伝えないとモチベーションが上がらないと思います。企業が人材を育てるという意識が必要で、できないことがあるのなら企業が育てることが重要だと思っています。
そのためのサポートといえば、定期的にハローワーク、職業センター、就労支援の支援者と面談を行い、親身に寄り添い話を聞いたり、必要であれば障害年金の申請なども一緒に行っています。
Q5 障がいのある方が安定就労をするために心がけていることはなんですか?
(佐藤様/小山田様)
求職者の方が見学された後に、実習をおこなっていただきますが、その際に、フェイスシートを事前に提出していただいています。また、そのフェイスシートをもとに受け入れ部署やチームとの打合せを実施しています。
現場のスタッフと障がいのある方の潤滑油という考え方です。フェイスシートから現場は理解し、配慮しなければいけないことはなにか、本人の特性など、そこで理解しながら円滑に進んでいくと考えています。
また入社してから、皆さんそれぞれのペースで定着されていく中で、こちらがやっているつもりでもサポートが十分でなかったり、そんな時は日々葛藤とか迷いながら進めています。自分だけではどうしようもできないときには、当事者と一緒になって考えながら本人のペースで仕事を進められるように心がけています。
Q6 卒業生が持っている強みやスキルが企業に貢献した、具体的な事例を教えてください。
(小山田様)
Aさん:入社手続きとか中途採用の業務をされており、システムを使って個人情報を管理しているのですが、システムの使い方については私よりも詳しいです。他の社員やメンバーが忙しいときにフォローしてくださったりしています。係長からもよく言われるんですけど、「本当に助かっている」、とお声を頂いています。
Bさん:PC操作でOfficeはもちろんのことマクロを組めたり、なんでもそつなくこなせるので、上司の方からも評判がいいです。また、勤怠が安定しており、休まれることもないですし、早めの出勤をされるので、責任をもって仕事をしていただけるので助かります。
Cさん:彼女は私が持っていない的確さや丁寧さがあって、私が見落とすところを見落とさずに教えてくれる。わからないことは自分で調べたりなどもしてくれます。ちゃんと確認もしてくれて、的確なメモを残してくれます。本当に的確でいつも感謝しています。
Q7 卒業生が入社した後の、Tech.neoとの連携についていかがでしょうか?
(小山田様)
詳しく様々なことを定着支援の面談で聞き取っていただけたり、何か問題があったときなど私も連絡をしやすく、相談ができるのが心強いです。聞いていただくだけではなくて実際に対応していただき、フィードバックもいただける。また私がわからないところや、専門家の意見が聞けるのが凄く心強いです。
Q8 就労支援事業所との連携についてどのような取り組みをされているのか教えてください。
(佐藤様)
私はあえて求人を出さないようにしています。まずはこういう人が欲しいという詳細を事業所に話して紹介していただくという形ですね。そのため、業務のマッチングができているため退職する方が少ないです。5年間で数名が退職(2024年11月1日時点)されましたがそれ以外の方は、業務がマッチングしているということで満足されている。今は高度な育成をされている事業所に声をかけています。そうすると、戦力になる方が来られるので、尖った部分の業務を担ってもらうんですね。退職率も少なく、安定して働いていただいています。本人としては特性上しんどいこともあると思うんですよね。だけど自分で活躍する道を見出している、そういったところが、ほとんど退職をしない理由だと思うんです。
Q9 障がいのある方の雇用を700人まで増やした経緯と、障がい者雇用を促進するにあたり、それぞれのフェーズで苦労したことは何ですか?
(佐藤様)
最初の1年が1番大変でした。最初に障がい者雇用を始めた際は、1人だったんですよね。最初の1年で86名の障がいのある方を採用しました。3年前よりさらに加速して、そこから更に50人、70人と採用を行った流れです。気が付けば700人の雇用へと繋がっていました。
障がい者雇用を進めるにはトップダウンで進める場合がありますが、トップダウンではなかったので、緻密な話ですけど、一つ一つ現場に行ったり、店長会議で障がい者雇用の話をして、障がい者雇用の理解をしてもらえるようになりました。
Q10 障がい者雇用を考えている企業様へのメッセージ
(佐藤様)
障がい者雇用については、「障がい者」を採用すると考えるからいけないのです。性格でありその方の特性なんですよ。健常者であっても、みんなそれぞれ特性をもっているじゃないですか。顕著に現れるのが障がい者であって、それを障がい者として一括りにするじゃないですか。最終的に僕が守ってあげればいいと考えています。だから障がいとか関係ないと思うんですよね。障がいの有無に関係なく、活躍する道を見出せるようにする。そうやって育てていくのが企業の責任だと思います。一人でも多くの方が受給者から納税者になってもらうということが必要だと考えています。
障がい者雇用を進めることは、企業の成長を促す手段です。多様な人材を受け入れることで、イノベーションを生み出し、持続可能な発展が実現すると考えています。
今回訪問した企業様の会社概要
- 企業名
- 株式会社トライアルベネフィット
- 事業内容
- ・ 株式会社トライアルホールディングス各子会社の業務委託
・ リサイクル事業