
アサーションとは?意味・効果・メリットをわかりやすく解説

アサーションとは、自分の意見を率直に表現しながらも、相手への尊重を忘れずに、良好な人間関係を築くためのコミュニケーションスキルです。本記事では、アサーションの意味、効果、メリット、具体的なテクニック、そして日常生活や仕事で実践するための方法について解説します。
自分の意見を率直に伝えられない、相手に嫌われたくないと思ってしまい、いつも我慢してしまう…。そんな悩みを抱えている方はいませんか?実は、相手に配慮しながらも自分の意見を効果的に伝えるコミュニケーションスキルがあります。それが「アサーション」です。アサーションを学ぶことで、良好な人間関係を築き、仕事やプライベートでより充実した日々を送ることができるようになります。こちらのコラムでは、アサーションの意味、効果、メリット、具体的なテクニック、そして日常生活や仕事で実践するための方法について解説します。
目次 [開く]
アサーションとは?
アサーションとは、相手の意見を尊重しつつ自分の気持ちを率直に表現し、自分の意見を主張するコミュニケーションスキルです。アサーションは、単に自分の意見を押し付けることではありません。相手との健全な関係性を維持しながら、自分の意見を効果的に伝えるための技術なのです。職場での健全な関係とは、お互いを尊重し、信頼し合いながら、円滑に仕事を進めることができるような人間関係のことです。以下では、アサーションの具体的な内容について詳しく解説していきます。
アサーションの効果とメリット
アサーションを身につけることで、さまざまな効果とメリットが期待できます。コミュニケーションを円滑にし、ストレスを軽減し、自己成長を促進するなど、人生のあらゆる場面でプラスの影響をもたらします。具体的な効果とメリットについて詳しく見ていきましょう。
良好な人間関係
アサーションは、自分の意見を率直に伝えつつ、相手を尊重することによって成り立ちます。相手が自分の気持ちを理解しやすくなり、誤解を防ぐことで、より良好な人間関係を築くことができます。また、相手の立場になることで対等な意見交換ができます。年齢、立場の違う人たちとのコミュニケーションにおいて、最近ではハラスメントを防ぐ手段として注目を集めています。
ストレスの軽減
自分の気持ちを抑え込み、我慢し続けることは、大きなストレスにつながります。アサーションを学ぶことで、自分の気持ちを正直に表現できるようになり、ストレスを軽減することができます。また、自分の意見を主張することで、自信がつき、ストレスを感じにくくなるという効果もあります。
自己肯定感の向上
自分の意見を率直に表現することで、自己肯定感が高まります。自己表現することにより、自分を深く理解し、自分の考えや価値観を受け入れることにつながります(自己受容)。さらにそれを相手に伝えることで、相手からの理解を得られたり、自己表現できたという成功体験を生んだりします。そうして自己肯定感を向上させることができます。自己肯定感の向上は、自信につながり、人生をより積極的に生きるための原動力となります。
仕事の効率アップ
仕事においても、アサーションは有効なスキルです。近年ではリモートワークの普及により、相手の感情や考えが伝わりづらいという課題も出てきています。そこで相手の状態に目を向け、自分の意見を明確に伝えることで、誤解を防ぎ、スムーズなコミュニケーションを促進することができます。また、他人の意見ではなく自分の意見を主張することで、自分の仕事に対する責任感や主体性を高めることができ、仕事の効率アップにもつながります。
リーダーシップの向上
アサーションは、リーダーシップを向上させる効果も期待できます。自分の考えやビジョンを明確に伝え、周りの人を巻き込むことで、より効果的なリーダーシップを発揮することができます。また、部下や同僚に対して、相手の意見に耳を傾け、尊重する態度を示すことで、信頼関係を築き、チーム全体のモチベーションを高めることができます。
NOといえる環境づくり
アサーションを利用することで、相手を不快にさせることなくはっきりと断ることができます。
例えば自分の業務が立て込んでいる状況で仕事を振られた際も、感謝の気持ちを示しつつ現状を具体的に伝えて断ることで、相手に誠意が伝わり納得してもらいやすくなります。
以上のような例のほかにも、話し合いや契約の場などでアサーションを利用することによって相手と良好な関係を保ちながら自分のすごしやすい環境を整えられます。
4つのコミュニケーションタイプ別にご紹介

アサーションにおいてコミュニケーションタイプを4つに分けることができます。まずは、自分がどのタイプの傾向が強いのか知ることで自己理解を深めていきましょう。また、ほかのタイプも知ることでコミュニケーションを取るときに大いに役立つでしょう。
- 攻撃的タイプ(アグレッシブタイプ)
攻撃的タイプは、自分の意見を強く主張するのが特徴です。相手の意見を受け入れず、怒鳴ったり言いくるめたりと、配慮に欠けた言動が多くなり他者との関係性が悪くなりがちです。組織において一見するとリーダーシップがあるように見えますが、自己中心的なことから周囲の反感を買いやすいタイプです。
- 非主張タイプ(ノン・アサーティブタイプ)
非主張タイプは意見を率直に言うのが苦手なタイプです。相手に否定されたくない、間違ったことを言いたくないというように自分に自信を持てず、理不尽なことに対しても自分の意見を押し殺しがちになってしまいます。相手に合わせすぎてしまい、自分の気持ちを理解してもらえないというストレスを抱えやすいです。
- 作為的タイプ
表面上は自己主張せず受け身的なコミュニケーションを取ります。しかし、相手に不満があると陰口を言ったり遠回しな言い方や態度で回りくどい自己表現をします。時には、遠回しに表現して相手を操ろうとすることもあります。
- バランスタイプ(アサーティブタイプ)
バランスタイプは相手に配慮もしつつ、自分の主張を適切に伝えることができるタイプです。攻撃的タイプと非主張タイプのいいとこどりとも言えます。相手も自分の意見も大切にするため、理想的なコミュニケーションの方法です。建設的なコミュニケーションも取れ、相手からも信頼されやすいです。
アサーションのテクニック

アサーションを効果的に実践するためには、いくつかのテクニックを身につけることが重要です。これらのテクニックを意識することで、自分の意見を率直に伝えながらも、相手との良好な関係を維持することができます。
I(アイ)メッセージを用いる
「I」メッセージとは、自分の感情や意見を伝える際に、「私は~と感じます」「私は~したいです」のように、「I(私)」を主語にして表現する方法です。相手を責めるような「あなたは~だ」といった表現を避け、自分の気持ちを主体的に伝えることで、相手との摩擦を減らすことができます。
DESC法の実践
DESC法とはアサーションの手順を4つに分けたものです。相手とのコミュニケーションを取る際にこの手順を意識することで、より効率的に会話を進めることができます。
- D=描写する(Describe)
自分や相手の今の状況を客観的に描写します。主観や推測が入ると間違った情報を伝えるおそれがあります。
- E=表現する・説明する・共感する(Express/Explain/Empathize)
描写した状況に対して自分または相手の気持ちを主観的に表現・説明・共感します。自分の感情を率直に表現することが大切です。ただ、感情を押し付けるような伝え方にならないよう注意しましょう。
- S=特定の提案をする(Specify)
相手に対応・承諾してほしいことを具体的に提案します。命令や強制にならないように意識しましょう。
- C=選択肢を示す(Choose)
相手が同意したときと、同意しなかったときどうするか選択肢・結果を示します。もし同意が得られない場合、もう一度S(Specify)に戻り新しい提案を考えることも必要です。
冷静さを保つ
感情的な状態では、冷静な判断や適切な表現が難しくなりがちです。そのため、アサーションを実践する際には、冷静さを保ち、感情に流されないように注意することが重要です。深呼吸をする、一旦冷静になる時間を取るなど、状況に応じて適切な対処法を取りましょう。
状況に合わせて柔軟に対応する
アサーションは、万能なコミュニケーション方法ではありません。状況に合わせて、表現方法や伝え方を柔軟に変えることが大切です。相手との関係性、状況、目的などを考慮し、適切なコミュニケーションを心がけましょう。
アサーションを日常で実践する方法
アサーションを日常で実践し、より良いコミュニケーションを築くためには、さまざまな方法があります。ポイントは、日常で意識し、練習を積み重ね、自分にとって自然な行動になるようにすることです。ここでは、アサーションを実践するための具体的な方法をいくつかご紹介します。
日記に書く
自分の気持ちを日記に書き出すことで、自分の考えや感情を整理することができます。また、文章にすることで、より客観的に自分の意見を見つめることができます。継続して行うことで自分の気持ちを表現することにも慣れてくるので、気持ちを表現することが苦手な方におすすめです。
ロールプレイングを活用する
アサーションは、理論だけではなかなか身につけることが難しいものです。実際に言葉にして伝える練習をすることで、より効果的に習得することができます。ロールプレイングは、具体的なシチュエーションを想定して練習できるため、アサーションを学ぶ上で非常に有効な方法です。友人や家族と協力して、さまざまな場面を想定し、練習してみましょう。また、アサーションを学べるワークショップに参加し練習することも一つの方法です。
アサーションの専門家から学ぶ
アサーションの専門家から学ぶことは、より深い理解と実践的なスキルを身につけるために非常に有効です。専門家の指導を受けることで、自分の課題を明確化し、具体的な解決策を見つけることができます。また、専門家と話すことで、アサーションに対する不安や疑問を解消することもできます。
自己肯定感を高める
アサーションは、自分の意見を率直に表現することです。そのため、自己肯定感が低い状態では、自分の意見に自信が持てずなかなか実践することが難しいものです。自己肯定感を高めるために、以下のことを意識してみましょう。
- 自分の良いところを見つける: 自分にはどんな良いところがあるのか、改めて考えてみましょう。自分の長所を認識することで、自信を持つことができます。短所しか思いつかない場合はポジティブな言い方に変換してみましょう。また、周囲の人に自身の性格について聞くことで新たな一面を見出すこともできます。
- 過去の成功体験を思い出す: 過去の成功体験を思い出し、自分を褒めてあげましょう。成功体験を振り返ることで、自信を取り戻し、自己肯定感を高めることができます。
- 周りの人に感謝の気持ちを伝える: 周りの人に感謝の気持ちを伝えることで、相手の良い側面を見ることになるため、自分の良い側面にも気づきやすくなります。また、ネガティブな感情を減らすことができます。感謝の言葉を伝えることは、自分自身を肯定することにもつながります。
ポジティブ思考を育む
ポジティブ思考は、アサーションを実践する上で重要な要素です。ネガティブな思考にとらわれていると、自分の意見を伝えることをためらってしまうことがあります。ポジティブ思考を育むために、以下のことを意識してみましょう。
- 良い面を探す: どんな状況にも必ず良い面があるものです。ネガティブな面ばかりに目を向けるのではなく、良い面を探してみましょう。
- 小さな目標を達成する: 小さな目標を立てて成功体験を増やすことで、行動に自信を持つことができます。目標に向かって努力することで、自己肯定感も高まります。
- 物事の捉え方を変える(リフレーミング): 同じ出来事でも、捉え方次第でポジティブにもネガティブにもなります。たとえば、雨が降っていることを「憂鬱だ」と捉えるのではなく、「空気がきれいになる」「植物が喜んでいる」と捉えると気持ちが前向きになります。
アサーションの誤解と注意点

アサーションは、自分の意見を率直に伝える有効なコミュニケーションスキルですが、誤解されやすい点や注意すべき点があります。正しく理解し、実践することで、より効果的に活用することができます。ここでは、アサーションに関するよくある誤解や注意点を解説します。
アサーション≠自己主張
自分の意見を主張することに注力しすぎると、相手を傷つけるような伝え方になってしまうことがあります。これは、アサーションの「相手を尊重する」という意味にあてはまりません。アサーションでは、相手を非難したり、威圧したりするような言い方は避け、冷静かつ穏やかな態度で伝えることが重要です。また、相手への尊重を忘れずに、相手の意見にも耳を傾け、丁寧な言葉遣いをするようにしましょう。
自己中心的にならない
アサーションは、自分の意見を主張することですが、自己中心的になってはいけません。相手の意見や立場を理解し、尊重しながら、自分の意見を伝えましょう。また、自分の意見ばかり主張するのではなく、相手の意見にも耳を傾け、お互いに理解し合えるようなコミュニケーションを心がけることが大切です。
状況に合わせた表現が重要
アサーションは、状況に応じて表現を変えることが重要です。たとえば、プライベートでの友人との会話と、仕事での上司との会話では、使う言葉や態度を変える必要があります。状況に合わせて、適切な表現を選ぶようにしましょう。
言語的/非言語的アサーション
他者とコミュニケーションを取る方法は、言葉だけではありません。表情やボディランゲージ、声のトーン、態度などから相手の感情を判断する非言語コミュニケーションも、アサーションを実行するうえで必要なスキルです。言葉選びだけでなく非言語的コミュニケーションでも相手を不快にさせないように意識することで、より相手に伝わりやすいコミュニケーションを取ることができます。
完璧主義にならない
アサーションは、完璧なコミュニケーションスキルではありません。完璧主義になりすぎず、失敗を恐れずに、積極的にコミュニケーションを取ることが上達する一番の近道です。失敗から学び、改善を続けることで経験を積んでいき、より効果的にアサーションを活用していくことができます。
アサーションを効果的に活用するためのヒント
アサーションを効果的に活用し、より良いコミュニケーションを築くためには、いくつかのヒントがあります。これらのヒントを意識することで、自分の意見を率直に伝えながらも、相手との良好な関係を築くことができます。
自分の価値観を理解する
アサーションは、自分の意見を率直に伝えるスキルですが、同時に相手の意見も尊重することが重要です。そのためには、まず自分の価値観を理解することが大切です。自分が何に価値を感じているのか、どのようなことを重要視しているのかを認識することで、相手の意見との共通点や相違点を見つけることができます。
相手の立場を理解する
自分の価値観を理解したら、今度は相手の立場を理解しましょう。相手がどのような状況で、どのような気持ちで発言しているのかを理解することで、相手の意見に対してより共感的な態度を取ることができます。相手の気持ちを理解しようと努力することで、より建設的なコミュニケーションが実現します。
コミュニケーションの練習を継続する
アサーションは、簡単に身につくスキルではありません。効果的に活用するためには、日々のコミュニケーションの中で意識し、練習をしてみることが重要です。これを継続的に行うことでスキルが定着していき、自然とアサーションを行うことができるようになります。練習を通して、自分の意見を伝える方法や相手の意見に耳を傾ける方法を磨いていきましょう。
失敗から学ぶ
コミュニケーションでは、必ずしもうまくいくとは限りません。失敗から学ぶことで、より効果的なコミュニケーションの方法を身につけることができます。失敗を恐れずに、積極的にチャレンジし、経験を通して成長していくことが大切です。
周りの人にサポートしてもらう
アサーションを習得する過程で、周りの人にサポートしてもらうことも有効です。失敗を経験にすることが重要な方法ですが、失敗ができない環境もあるかと思います。そんなときに信頼できる友人や家族に、自分の意見を率直に伝える練習相手になってもらったり、アサーションに関する書籍やセミナーをともに参加してもらったりなど、大きな助けになります。練習の第一段階として、安心してコミュニケーションを取れる環境を確保することをおすすめします。
まとめ
このコラムでは、アサーションについて多角的に解説し、コミュニケーションを見直すきっかけや具体的な方法を紹介しました。まずは意識することから始め、少しずつ実践しながらコミュニケーション力を育んでいきましょう。
Tech.neoでは自己理解の一環として、アサーションスキルを学べる環境があります。この記事で興味を持たれた方は、ぜひお気軽にTech.neoへお問い合わせください。